殺陣師・アクション監督・映画監督など様々に活躍されていた高瀬将嗣氏が亡くなられました。
2016年2月20日に川崎市の東海道かわさき宿交流館で行われた氏の講演について、当時Facebookにしか上げていなかったことを思い出したので、改めてここに貼ります。
しっかりメモを取っていたわけでなく、あとから思い出して書いたもの、かつ、武術的な下地の話は(当然のこととして)スルーしていて、殺陣・技斗(擬斗)に関する部分しか残っていないのはご了承ください。
ちなみに早めに会場入りして、最前列かぶりつきで拝聴しました。
殺陣・擬斗・技斗
歌舞伎の言葉では「立廻り」。歌舞伎用語の「殺陣」は集団での立廻りを指す言葉だったが「立」の音をとって「たて」と呼ぶようになった。
「擬斗」という言葉を生み出したのは坪内逍遥。その後、戦後GHQによって時代劇・殺陣が禁止されていたとき、「擬斗」と呼ぶことで時代劇を作るようになった。
「技斗」は先代の高瀬将敏氏が作った言葉。時代劇に限らず現代劇でも使え、かつフェイクを表す「擬」でなく「演技」の「技」を当てた。
殺陣師
先代の高瀬将敏氏は日活の殺陣師だったが、71年を境に撮影所が殺陣師を抱えなくなりフリーに。現在の日本では、お抱え殺陣師は太秦に4名いるのみ。フリーの殺陣師も、映像・演劇・ヒーローショーを含めても全国に200名くらいしかいないはず。
刀
氏の道場では、原則竹光を使用。竹光は本身の半分くらいの重量。重さを知るためにまれに真剣(模造刀かも?)を持つことはある。 相手の刃を刃で受けることは無いが、それでも当たったときのため刃側をコーティングしてある。
尾上松之助は真剣(刃引きはしてあるはず)で歌舞伎を活かした殺陣を、阪東妻三郎は竹光で軽快な殺陣を演じた。
斬られかた
斬られ方に「グー」「チョキ」「パー」。グーは突かれたりして屈する、チョキは身をよじる、パーはのけぞる。これでバリエーションをつける。
倒れるときは、必ず右半身が下。逆向きに倒れると鞘を痛める恐れがあり、小道具さんに怒られる。
安全について。 突きは鎖骨より下。万一の事故防止のため。 正眼から相手の刀を払うときも腕を伸ばさないで引き付けて払う。 振りかぶりは上にでなく、介者剣術のように(兜を被っているとまっすぐ振りかぶれないので)外から巻くように振りかぶる。
実演その他
お弟子さん・お客さんも交えて、技斗の実演や、真剣での試し斬り実演などがありました。 また上記以外にも色々お話されていて、現代劇で車にはねられるスタントでは時速何キロで当たっているかなど*1*2。
この講演の約1年前の『秘伝』誌が殺陣特集で、高瀬氏の記事もありました。質疑応答の時間にこのことを質問したのですが、雑誌に何を話したかもう覚えていないな、と笑っておられたことを覚えています。
改めて、氏のご冥福をお祈りします。