キャッスル・ティンタジェル城主であるジェイ・ノイズ師による実演と解説DVD。Amazonでは品切れで割高ですが、出版社直販なら定価で買えます。
ヨーロッパの正統な中世ドイツ剣術 西洋剣術入門 両手剣ロングソードの使い方 [DVD]
- 出版社/メーカー: BABジャパン
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: DVD
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武術に限らず「入門」というジャンルは難しく、特に「どこから」「どこまで」書くか(DVDなので"撮るか"?)が問題で、つい基本・常識と思っていることを端折ってしまったり、また逆に基本に寄りすぎて面白みを削ぎ落としてしまったりされがちです。
その点、本DVDは、まず中世ドイツ剣術の特徴・エッセンスの紹介を多めに取り、次いで立ち方、歩法、剣の持ち方を丁寧に説明してから構えや技の紹介に入ります。 所々、日本刀や日本の剣術との違いという観点で説明されていたり、正面からの絵だけでなく側面や相手の視点からの映像があったりと、とてもわかりやすく感じました。
また、終盤ではアドバンスレベルの技としてディスアームやレスリング的なもの、スパーリングのルール、鎧の種類による有効な技の違いの紹介もあり、充実した内容でした。
以下、ドイツ剣術・ロングソードの特徴的な部分を中心にメモ。
Chapter 1: ドイツ剣術ロングソードについて
- ロングソードの技法は、14世紀ドイツのヨハネス・リヒテナウアー(の弟子の残した書物)から。17世紀に失伝したが、20世紀にインターネットを通じて世界中で研究が進み復元されたもの。
- 一般に思われているような力で叩き合うものではなくテクニックがある。映画やフェンシングと違い、防御・攻撃の2モーションでなく、攻撃と防御を同時に行なうシングルタイムアタックが特徴。
- レスリングの技術も剣術の範疇
- バインド*1で相手の剣をコントロール、相打ちを避ける
- 剣は体の中心でなく外側に構える(後で出てきますが、日本剣術で言う八相や脇構えに近いものはあるが、正眼のようなものは無い)
- 両刃なので、フロントエッジだけでなく、バックエッジを使う技もある
- 日本刀と違って、重心が刀身の腰のあたりにある(この差は技にあらわれます)
Chapter 2: 足さばき
- 史料に出てくる上級者向けの立ち方も紹介した上で、初心者が練習するために、より腰を落として足先を開いた立ち方を基本とする
- ただの歩法でなく、移動しながらの斬撃にもつながるため重要だと強調
Chapter 3: グリップ
- 右手親指は刀身のほうに立て、エッジの向きを変えるのに使う
Chapter 4: 基本の構え
- 構えは静止したものではなく、動き(技)の起点と終点の姿勢である、という考え。さらに、終点は次の技の起点でもあり連続していく。
- リヒテナウアーの構えは4つ。フォンターク(屋根から)、オックス(雄牛の角)、プフルーク、アルバー(愚か)
- 弟子のリンゲックが追加したもの*2のうち2つ。シュランクフート、ネーベンフート
Chapter 5: 基本の斬撃
- 当時の剣術指南書から復元しているため、どうしても奥義のような技が多くなる。なので、基本技は手に入る資料をもとに再構築して教えている
Chapter 6: 達人の斬撃(マイスターハウ)
- カリの人向け:
- ツベルクハウ:横向きのアバニコ
- シールハウ:縦向きのアバニコ
Chapter 10: ヴィンデン(巻き)とバインド
- カリの人向け:
- フィデュル・ボウ:スネークなディスアーム。刀身に腕を巻きつけて、十字鍔を握って無力化。
Chapter 11: 鎧を着ない戦闘の基本ルールと実践例
- スパーリングのルールを紹介。頭と胴へのヒットは2点でそのラウンド勝利、腕・足は1点
- 攻撃がヒットしても、そのままの体勢から一回だけ反撃できる。反撃がヒットすれば相打ち。これは例えば自分の頭部を晒して相手の足を攻撃するといった無謀な攻撃で勝てないようにするため。
- アドバンスルールでは、頭と胴へのヒットが3点となり、相対的に腕・足のポイントが下がる。パンチ、キック、レスリングを使えるといった違いがある
Chapter 12: 鎧無し・軽装鎧・重装鎧の戦闘術の違いについて
- プレートに対して、左手で刀身の中央を掴んで使う「ハーフソード」の技術。手槍のように使って、鎧の合間を突いたり、レスリングで倒したり。