7/8に開催された『九宮八卦掌・戦術セミナーIN文京』に参加してきたのでメモ。
八卦掌(Ba-gua-zhang)とは、19世紀前半(清朝後期)に董海川(Dong Haichuan)によって創始された比較的新しい門派で、尹派、程派をはじめ、多くの分派があります。
九宮八卦掌は、分派のうち史派八卦掌の流れをくむ門派で、九宮とは八卦を八方向に配置した図の中央を九宮と呼ぶことから来ているそうです。日本には、趙玉祥老師 - 小幡良祐老師(当セミナー主催)と継承されているとのこと。
セミナーでは、八卦掌独特の歩法、その歩法を使った攻撃回避と反撃、内功、発勁まで、まさに八卦掌でどう戦うのかという、武術としての八卦掌を体験できました。
歩法
八卦掌のコンセプトとして「相手の正面で攻撃を受けることを避け、相手の側面から攻撃する(避正斜打)」があり、これを実現するために以下のような歩法があります。
- 後ろ重心の立ち方
- 前足を内側に向けて転回する擺歩(はいほ)
- 逆に前足を外側に向けて転回する扣歩(こうほ)
- 後ろ足を水平に上げる「平起」と、前足を水平に下ろす「平落」
動作をひとつひとつ練習した後、二人一組で「攻撃をかわして側面にまわって攻撃」といった応用の練習も行なう、という流れでセミナーは進行されました。
擺歩・扣歩による転回および相手の側面にまわる動作は、とても合気道的な感触で、平起平落も日本の古武道で「腰を安定させる」と言われることに近いものを感じました。
合気道の元となった大東流合気柔術も(諸説あるそうですが)明治になって武田惣角が他流の技を統合して編纂したものらしく、八卦掌の成り立ちと似ているのも何か武術の流れのようなものがありそう興味深いです。
葉底蔵花
映画『グランド・マスター』でチャン・ツィイー演ずる宮若梅(ゴン・ルオメイ)の台詞でだけ出てきた技。実際は秘伝のようなものではなく基本的な、でもそれだけに奥の深い技とのことで、これを練習。
葉底蔵花は最終的に標指での突き技なのですが、その手の形には暗器(隠し武器)を持つことが想定されていたりと、武器術好きとしても興味深い技でした。
空間把握
視点(日本の古武術で言う「遠山の目付け」)、円周をまわるとき意識を円の中心に向ける、一人の相手だけでなく、エリア全体を把握する*1、といった内容。
また内家拳的な部分として、呼吸などによって空間把握の向上などもありました(が、うまく書けないので割愛)。
発勁
八卦掌を伝承されている方々が、おおむね他の門派(形意拳など)も習得されていることから、八卦掌自体に打撃のイメージがなかったのですが、ちゃんと発勁もパッケージされていました。
付け焼き刃でできるものではないですが、地面 - 足 - 背中 - 掌と力を伝えることによる発勁を少し練習。
また、デモンストレーションとしてですが、構えからまっすぐ打つ、という攻撃でなく、変化しながら相手の構えの隙間から攻撃するといった形も見せていただきました。
所感
八卦掌はずっと気になっていた*2ものの、縁もなく、また自分に合うのか?という思いもあって縁を作ることもなかったので、今回このセミナー*3に日程が合って非常に良い経験ができました。
八卦掌のイメージは「よく回る」くらいのものでしたが、それが歩法から来る合理的なものであり、合気道に近しい理合があること。また、発勁までパッケージされた、まぎれもない武術であることを体感できる良いセミナーでした。
小幡老師の「旺龍堂」では、今回のようなセミナー開催のほか、通常の稽古も特に入会・入門や月謝制ではなく1回毎の「講習費制」で運営されているとのこと。 非常にありがたいので、間隔が空いてでも(身につくのは遅くなるでしょうけど)時間を見つけて習いに行きたいところ。
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