KEYSI TOKYO(KEYSIジャパンアカデミー東京校)で開催された、KEYSIオープンセミナーに参加してきました。
KEYSI(スペイン語読みで"ケイシ")*1は、1980年にスペインのフスト・ディエゲス(Justo Dieguez)師が創設した護身術・格闘術で、映画『バットマン ビギンズ』(原題:Batman Begins)からの三部作や、『アウトロー』(原題:Jack Reacher)及び『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(原題:Jack Reacher: Never Go Back)などで使われているもの。
日本でKEYSIを習うことが出来る「KEYSIジャパンアカデミー」は設立からまだ1年、スクールも福島県白河市と東京*2の2校のみと、まだまだ希少な状況です。
インストラクターの和知師がKEYSIをはじめたきっかけ、また福島県白河市のご当地ヒーロー「ダルライザー」との関係などは『月刊秘伝』2017年6月号の特集「進め!プログレッシブ武術」で紹介されています。
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KEYSIにおける格闘は(1対1でなく)1対多を想定したもので、常に頭部を深くガードし、攻撃時もガードしながらパンチ*3や肘打ちするスタイル。 雰囲気は動画参照*4。
セミナーでは、ウォーミングアップ、2人組でのジョグ(これも状況判断・アクションを含む興味深いものでしたが割愛)に続いて、KEYSI固有の動作に入っていきました。
ソンリサ
ソンリサ(Sonrisa)とはSmileの意で、スマイリーフェイス(ニコちゃんマーク)の口のような軌跡で腰を落としながら左右や前後への重心移動を行なう動作(の練習)。他の武術でも近い動作はあるものの*5、これだけを深く練習するものは珍しいのではないでしょうか。
また、半円ではなく全円を描く動作も練習しました。これはサーキュロ(Circulo)と言うそうです。
ロダムンド
ロダムンド(Rodamundo)とはAround the worldの意で、KEYSIにおける4つの体位(スタンディング、ニーリング、シッティング、ライイング)をスムーズに遷移する練習。
今回のセミナーではライイング(仰向け)は割愛され、3つで行ないました。また、それぞれの体位で頭部をガードする形を取ります。
ペンサドール
ペンサドール(Pensador)とは考える(ペンサ)+人(ドール)の意で、上にも書いた頭部を深くガードする形を言います。形状からだけでなく、周囲を観察して脳で「考える」という意味も含まれるとのこと。 正面〜頭頂部を中心に後頭部までガードする形と、側頭部〜後頭部をガードする形の左右で計3パターン。
正しくガードするのはもちろん、腕の隙間から周囲の状況を確認することが重要で、ミットを使った練習、パンチによる攻撃を交えた練習が数パターンと続いたのですが、それぞれ周囲の観察や状況判断が求められる練習方法が取られていました。
この、ペンサドールをしながらのパンチもKEYSI独特のものであり重要なのですが、肩の動きにもポイントがあってかなり難しく(変に力が入ってしまったり)、結局、納得行く形には届かずにセミナーを終えてしまったのが心残りです。
最接近した状態での技
胸ぐらを掴まれたときの返し技、相手の懐にエントリーして(タックルではなく)テイクダウンを取る技、の2種類を練習しました。詳細は割愛しますが、いずれもいわゆる合気道的な理合ではなく、シンプルにテコの原理を使うという印象。
プレッシャーのかかる戦闘状態においては精密な動きが難しいと言われます。これら2つの技は、それほど精密さを求められない(ポイントを外さなければですが)ように感じたのですが、そのあたりもKEYSIの設計には織り込まれているのかもしれません*6*7。
所感
現代的護身術としては、先日セミナー参加させていただいたクラヴマガがあります。双方に共通して言えることは、1対多を含めた状況判断の重要性、フィットネス要素が入った練習である、というあたりでしょうか。
あえて比べると*8、その場からの離脱をより意識するのはクラヴマガ、1対多をより意識するのがKEYSI、という印象を持ちました。
1対多を謳う武術は多々ありますが、練習方法を含めてここまで徹底しているのはKEYSIの大きな特徴ではないでしょうか。ただ、これは「1対多で勝つため」ではなく「1対多の不利さを知るため」の意味が大きいと和知師は言っていました。
素手対ナイフなども同様で、不利な状況を不利と認識し、自分を過信しないで行動する、という(言わば「あたりまえ」の)ことの重要さ、そして、それを実践するには徹底した訓練が必要だということを再確認したセミナーでした。和知師、並びにKEYSI東京校の皆様、ありがとうございました。
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nowsprinting-ma.hatenablog.com
*1:2012年まではKEYSI Fighting Method(KFM)が正式名称だったそうですが、現在はKEYSI by JUSTO DIEGUEZに変わっているとのこと
*2:東京校は現在は土曜のみですが、平日クラスの開設も考えているそうです
*3:スペイン語でプニョ(puño)。スペイン語由来のタガログ語であるアーニス(カリ)の技で、柄で打つことをプニョ(punyo)と言うのですが、同語なのか類語なのか気になります
*4:動画にあるダブルスティックの技が気になっていたのですが、武器術は素手より上位の技で、今回のセミナーの対象外とのこと
*5:日本の武道では腰は安定させるものと言われるので異なりますが
*6:和知師に確認すればよかった…
*7:ハイプレッシャー下でも正確に動けるように稽古を積むのも大事なのですが
*8:余り比べるべきものではないのですが、あくまで現代的護身術という観点での話として。また、どちらもしっかりと習ったわけではなく半日セミナーを受けた範囲での印象です